長女の高校受験から卒業までの備忘録を残そうと想いつつ、年度替わりの雑事に忙殺されているうちに、もう4月。
3日前に高校の入学式も終わり、物品の購入から提出物、金融関連の手続き諸々を済ませ、ようやく長女を新しいステージに送り込むことができた。
長かった受験生活…遡ること昨年夏。
部活のソフトテニスが終わり、憧れの進学塾の夏期講習に参加したあたりから、長女の高校受験が本格始動した。
塾には同中学の生徒も多数おり、張り合いのある環境、熱心な先生方のわかりやすい授業、データに基づく多くの問題演習の甲斐あってか長女はぐんぐんと成績を伸ばしていった。
週3日以上、夜10時帰宅のハードスケジュールに屈することなく、盆も正月も通塾した長女の体力や根性は部活動を3年間やり遂げたことに起因していたに違いない。
学習面では、天才肌タイプの長男とは違い、難しい問題は後回しにして取れる問題を一点でも多く取ることに専念した。
その点、兄よりも素直に塾の先生のアドバイスを聞き実行していた印象。
志望校については、入塾した当時は、学区内偏差値4位の県立高校がぎりぎり安全圏だった。
親としては学区内偏差値3位の県立に入ることができれば上出来だと思っていたが、長女は2位の県立に入りたいと言い出した。
そこで夫婦で話し合い、県や塾の模試で合格判定Aを取り続けたら目指しても良いと本人に伝えた。
すると長女は、志望校合格判定Aをコンスタントに取り続けた。
そのため、最終的に学区内偏差値2位の県立高校を第1志望校とすることに決めた。
我が家は長男が県外の私立高校の寮に入っているため、長女には是が非でも自宅から通える公立高校に通ってもらうことを望んだ。
長女も特段行きたい私立がなかった為、公立高校を目指すことに納得してくれた。
結果、本命の県立に落ちても公立には行けるようにと私立、組合立、県立の3校を受験することとした。
私立高校は2ndクラスに合格することができた。
その波に乗って、組合立は特進クラスを受験。
ところが、そのあたりから雲行きが怪しくなってきた。
いつも受けている県模試で、第1志望校合格判定がAからCに落ちてしまったのだ。
直前の模試でそんなことが起きたものだから、長女も大きなショックを受けていた。
組合立の受験結果は県立入試の前日にしかわからないため、ハラハラしながら通知を待っていたが、無事に合格することができたため、安心して本命の県立高校を受験することができた。
ところが、ここでもまた一波乱。
県立の入試問題の国語と数学が例年にない難易度で思った以上に解けなかったとのこと。
残り3教科で必死に気持ちを奮い立たせ、2教科分の失点を取り戻し、何とか終了。
直ぐ様塾で自己採点をしたところ、思った通り国数が取れておらず、合否はグレーゾーンのまま卒業式を終えた。
発表当日、夫婦で休みを取り、ノートパソコンの前に座る長女を離れた場所から見守っていた。
一瞬、アクセス集中で繋がらなかったインターネットがようやく繋がった。
何やら番号を探している様子。
しばし沈黙が流れる。
10秒、20秒、そしてズズッと鼻をすする音が聞こえてきた。
その瞬間、2年前の悪夢が蘇る。
パタンとパソコンを閉じて「無かった」と立ち上がった長男の顔が思い起こされ、崩れ落ちそうになったが、本当に辛いのは本人なのだから、これからどのような言葉で励まそうかと考え始めた矢先…
「合格してました」
と長女の明るい声に拍子抜けした。
「脅かさないでよー!!」
体中の緊張がふわーっと解かれて、涙が溢れた私。
夫も「おめでとう!」とホッとした様子。
長かった受験戦争もこれにて終了。
しかし、これで終わりではなかった。
私は、長女の受験勉強モチベーションアップのために、彼女と約束していたことがあった。
それは、第1志望校に合格したら母娘二人で韓国ソウル旅行をすること。
何故ふたり旅かというと、しっかり者のパパがいたら何もかもお任せで頼りっきりになってしまうので自立を目的とした旅ではなくなってしまうから。
少し不便な思いをしても女同士気兼ねなく韓国の食文化を堪能し、プチプラで可愛いファッションやコスメを思う存分買い回ることを彼女は楽しみにしていたのだった。
それは彼女が女性として自立に向けて歩みだすために、意味のある時間になると思っていた。
実は二年前長男が第一志望校に合格していたら、父子ふたり旅を企画していた。
目的地は長男の好きなマチュピチュでも京都〜東京でもどこでもありだと思っていたが、長男の自立にはあと3年間の猶予が必要だったようで、父子ふたり旅は叶わなかった。
話を母子ふたり旅に戻すと、その後他の予定も立て込んでいて日程が選べなかったため、出発日は合格発表から3日後に迫っていた。
事前にパスポート申請を終え、旅行会社を通じて航空券やホテルは押さえていたものの、不合格だった場合は、キャンセル料を支払っても迷わずキャンセルする約束にしていたため、そこからは猛スピードで準備に取り掛かった。
そして出発の前日、夫から長女に15年間所有を我慢したスマートフォンのサプライズプレゼントがあった。
携帯用モバイルバッテリーやWi-Fiをレンタルして、思う存分スマートフォンを使い、イヤフォンでK-POPを聞きながら二泊三日のソウル旅行を楽しんできた。
「15年間生きてきて、一番楽しかった。思い切ってここまで来て良かったし、受験頑張って良かった❤」
長女の口からその言葉を聞けたことが何より嬉しかった。
頑張って結果を出せばご褒美が待っている…そのことを実感させるために少しだけ無理をして計画した旅行だった。
私にとっても初めての韓国で、初めての子どもと二人きりの旅だった。
ただし、ベッタリ姉妹のような母娘関係を築くつもりもないので、二人旅はこれが最初で最後。
「これから行きたいところへは自分の力で行っておいで。そして、次はママじゃなく、自分で作った大切なお友だちと、自分で計画した旅が出来るといいね」と伝えた。
私も親として彼女にしてやれることはやり切ったと思えたほど密に関わった15年間だったから、私にとっても、卒業旅行。
これからは、彼女を「可愛い私の娘」から「一人の自立した女性」として程よい距離感で接していこうと思う。
そしてこれからの3年間は、彼女がどんな仲間や師に出会い、進路を選択するのかを少しだけ離れて楽しみに見守り、最適な環境を準備してあげることが親としての役割になるだろう。